体験設計では必ずしも新しいモノやサービスをデザインする必要はなく、新しい使い⽅や⾒⽴てによって新しい体験をデザインすることができます。
そのためプロトタイピングでも既存のモノやサービスをHackして楽しむことからたくさんの新しいアイデアが⽣まれてきます。
最初のプロトタイプは空き箱
製品設計の前に体験設計をおこなうという順番を考えると、体験設計の段階では具体的な製品の形がまだ無いことが当たり前です。そんな時に使うのが⼿近なものを「何かに⾒⽴てて」体験してみることです。
もっとも良くおこなわれるのが、製品の代わりになる空き箱を⽤意してそれを⼿に持ったり置いたりしてアクティングアウトをおこなう⽅法です。⾃分の体を動かすことは事前の準備も費⽤も掛かりませんので上流の最も早い段階でおこなうプロトタイピングとしては最適です。
「空き箱プロトタイピング」は、物理的な存在として主に⼈と装置の関係を意識するのに有効ですが、想像⼒を膨らませることで装置の向こう側にいる⼈やサービスを意識することもできます。
空き箱プロトタイピングと同じような意味で「段ボールプロトタイピング」も良く⾏われる⼿法の⼀つです。⼤きい箱を使って利⽤空間をプロトタイピングすることで物の配置や⼈の動線が理解しやすくなります。
このように⼿近にあるものを利⽤(Hack)し想像⼒を膨らませて、早い段階で体験してみることが体験設計にとって重要です。
電⼦機器/ネットサービスは既存製品をHACKする
体験設計の重要性が増してきている背景には、単に⼈が機器を操作することにとどまらず、他の⼈との関係性やそれを繋ぐ複数の機器が連携することで経験価値が⽣みだされるようになってきているからです。
⽣産者の顔や名前を知っている野菜、漁師が着ていたジーンズ、同じ目標でトレーニングに励む仲間、さまざまな⼈との関わりの中で特別な価値を作り出すことは体験設計の一つです。
それらが単なる顔写真としてではなく、気温や湿度などのデータ、⽣産者が朝早くから活動しているフィジカルなデータなどより想像⼒を掻き⽴てる情報によって強いナラティブが⽣まれてきます。
現代これらの繋がりを裏で伝えているのが電⼦機器やさまざまなサービスです。それをプロトタイピングするためには空き箱を持つだけでは少し難しいところがあります。
世の中に提供されている機器やサービスは多くの⼈に特定の体験に誘導するためにデザインされていますが、その機能の本質に⽬を向ければさまざまな⽤途や体験に応⽤できるものです。そこを⾒抜き⾒⽴てることで「Hackプロトタイピング」が実現できます。